2007年07月14日

台風の恐怖

 もう20年近く前になるが、私は学生時代には親元を離れ日本海側に住んでいた。
住まいは戦時中に立てられた軍用の施設を改造したボロ屋で、シーサイド10mに存在した。
 広い倉庫のような建物で、その倉庫の所々に部屋が造られているという変わった建物である。
実際、部屋以外は倉庫として使われいた。
(と言うよりは、倉庫に住んでいた)
 住人は、同じ学校の者が2人と、自衛隊に勤務していた方が1人、隣の自動車整備工場で飼われていた犬が3匹だった。
 その日、台風19号は日本海側に針路をとりゆっくりと近づいて来ていた。
夕方5時頃、我々の住む住居の正面に陸揚げされていた一人乗りのヨットが風にあおられ「ズッ!ズッ!」と音をたて住居に移動し始めた。
風速は恐らく20m/s位だろうか。
まっすぐに立っていることができない。
岸壁からは風波が打ち付けられており、我々の頭上に降りかかる。
とりあえず、ロープ数本でヨットを固定することに成功し建物に避難した。

 夜9時。
風はさらに強く、雨も激しく降り始めた。
波は我々の住む建物よりも高く打ち付けられ始めた。
 外壁が板材で建てられた我々の住居は、横からの波を被り壁から浸水を開始した。
(波をかぶる度に、横の壁から水が吹く状態)
当然、天井からも尋常じゃないレベルの雨漏りが始まった。
 あまりにもの状況に、パソコン(NEC PC9801XL2 当時は高価)をビニール袋に包み、さらに布団でつつみ、その上からブルーシートで包んだ。

 夜11時。
「ゴゴゴ!」と、何やら外壁を擦る音がする。
あまりにも風の強さに外を確認することができない。
この頃にはすでに停電しており、住民3人と犬3匹で建物の中央付近で懐中電灯を片手にかたまっていた。
 壁からの音はさらに強まる。
「ミシミシ」とイヤな音が響く。
 次の瞬間、「ガガーン!」という激しい音とともに壁を突き破ってヨットが建物内に侵入してきた。
 一気に激しい風が建物内に入り込み、壁の破壊とほぼ同時に、建物の天井の一部が吹き飛んだ。
さらに、塗り壁も剥がれ落ち、自動車修理工場のシャッターも吹き飛んだ。
なにやら分からないものが、至る所から降り注ぐ。
「こりゃ、やばいぞ」
と、避難を試みるが、外は風速30m近い風が吹き荒れ、波が10m以上の高さで降り注いでいる。
外に避難することは不可能である。

 我々は、建物から5m位の所に駐めてある、それぞれの車に逃げ込むことにした。
それぞれが犬一匹を連れて行くことにした。
 犬を抱きかかえ、ほふく前進で車に向かう。
何とか車に入り込み、前のシートと後ろのシートの隙間に体を押し込み毛布を被った。
 エンジンはかけず、ラジオを聞くことにした。
激しく打ち付ける波と風とで、ラジオの音はほとんど聞こえない。
時折、車が持ち上がるほどの激しい風が吹き、どこかで何かが破壊されるような音がする。
 犬と抱き合うこと数時間。気がつくと風の音が止んでいた。
毛布から顔を出すと、まだ薄暗い。
が、ガラスの所々からまぶしい光が差し込んでいる。
恐る恐る車外に出てみた。
車は、なにやら海草のようなもので全体が覆われており、白い車体が深緑色に変わっていた。
 あまりのまぶしさに目を覆う。
ほぼ同時期に他の住人も車外に出てきた。
お互いの無事を喜んだ後、目の前の状況に言葉を失った。
 我々の車の約5mほどの所に直径2mほどの丸太が3本打ち上げられていた。
その海は湾内であったため、数キロ離れた所に海に材木を浮かべて保管する貯木場があった。
 その材木数十本が岸壁に打ち上げられていたのである。
その内の3本が、ニアミス状態であった。

我々は助かったが、この台風で多くの方が命を失ったと記憶しております。

 我々の近くでの被害では、信号機が波で折れ、近くのフェリー乗り場の建物が倒壊、ホテルの屋上看板が数百メートル先まで飛ばされた。数十棟が海水による床上浸水。
そして、私が住んでいたボロ屋は半壊。

 後日談として、打ち上げられた材木ですが、まったく別の業者が黙って持っていってしまったそうで、貯木場は大損害を被ったそうです。
 そういえば、台風一過の当日には、トレーラーとクレーン車が来て大きな材木からせっせと運び出していました。
あれが泥棒だったとは・・・・・

 ちなみに、この時に近くの気象台で観測された最大瞬間風速は53m/s。
ホテルの屋上看板とフェリー乗り場を破壊した時の瞬間風速です。
この時、車は確実に数十センチは動きました。
一瞬浮かんで地面に落ちたといった感覚でした。
 この時に外に居たら・・・・と考えると今でも恐怖に襲われます。
風速20m/sでも人間はほとんど活動できません。
それが50m/sとなったら、恐らく吹き飛ばされていたことでしょう。
ラベル:台風 災害体験
posted by 柴犬げんた君 at 12:09 | TrackBack(0) | 日々の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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